記 事
2020.02.15
一口に日本刀といってもさまざまな大きさや種類があります。「自宅に日本刀があるが価値がわからない」と感じている方はたくさんいらっしゃると思います。
本記事では、日本刀の価値はどのように決まるのか、プロの目から見て解説します。
日本刀の保存状態・状況をよく確かめましょう
日本刀に付随するものは大まかに分けて折紙や登録証などの証書類、刀身自体、その他装具の3つになります。これらが日本刀の価値を決める大きなポイントになりますので、ご自身が所有しているものに欠けはないか、どれに当たるかを確認してください。
日本刀に付属する証書には、折紙、登録証、鑑定書などがあります。どれも似たような雰囲気と名前を持ったものですが、意味合いが大きく異なります。特に登録証がない場合は所持も許可されないので注意してください。登録証が見つからない方はこちらの記事もご覧ください。
全国の教育委員会が発行する書類です。この書類がないと前述したように、売買はおろか所有することができません。まずは登録証の有無を確認しましょう。昭和50年代後半以降からはラミネート加工がされているB7サイズ(約12.8㎝×9.1㎝)のもの。それ以前はA7サイズ(約10.5㎝×7.4㎝)の大きさの証書になります。
室町時代から続く日本刀の研ぎ師、鑑定家である本阿弥家などが刀を鑑定した際に発行した鑑定書です。また、折紙がつけられる日本刀には条件があり、江戸時代などではかなり高額なものでなければ発行されなかったようです。加えて、現在は折紙がなくなってしまっているものも多く、折紙が正しく揃っている日本刀は価値が高くなります。
1948年に発足した公益財団法人日本美術刀剣保存協会によるものだけでも「保存刀剣・刀装・刀装具」「特別保存刀剣・刀装・刀装具」の2種の鑑定書をはじめ、同協会発行の「貴重刀剣・貴重小道具」「特別貴重刀剣・特別貴重小道具」「甲種特別貴重刀剣・甲種特別貴重刀装具」の3種の認定書、「重要刀剣・重要刀装具」「特別重要刀剣・特別重要刀装具」の2種の指定書とさまざまな証明書があります。
これらは売却時の査定に影響し、これらがない場合は無銘の可能性もあります。鑑定料を出して鑑定したほうがよいか検討したい場合は、当店のような専門店にご相談いただくとよいと思います。
刀が作られた時代や、その損耗具合により日本刀の価値は大きく変わってきます。所有している日本刀がどのようなもので、保存状態がどの程度なのか知るために以下を参考にしてください。
その刀が作られた時期や場所、そしてその価値を知るためには、刀の姿(作り方の仕様)を見ていくことになります。制作された年代ごとの特徴ですが、平安時代の刀は刀身が大きく反っていて幅狭、鎌倉時代のものは反りの様子が変わっています。江戸時代のものはあまり反りがない等、刀身の反りや長さ、切先(きっさき)には年代ごとの特徴が見られます。これらの特徴から制作年代を特定し、価値を判断していきます。
また、刀身に刻み込まれた「銘(めい)」で、制作者がどのような流派の刀工で、どこで作られたかがわかります。「備前国長船住長光(びぜんこくおさふねじゅうながみつ)」や「備前国則宗(びぜんこくのりむね)」など聞いたことがあるかもしれませんが、これらが銘にあたります。
さらに、刀に使われている地金や、刃の部分に現れている刃紋によって刀自体の品質などを推察することができます。
一度ご自身で刀身をじっくりを眺めて確かめていただけるとよいかと思います。特徴がわかるのとあわせて愛着も深まるかもしれません。
日ごろから手入れをしている日本刀であれば、刀の状況を把握されていると思いますが、蔵や家の奥にしまわれていて突然出てきたものなどは、状況がよくわからないものです。
刀身にサビが浮いてしまっているものや刃こぼれしているもの、傷が入っているものは美術品としての価値が落ちてしまいます。このような場合は当店にご相談ください。
また、大きな損耗がなかった場合でも注意が必要です。頻繁に眺めるものは打ち粉を打ったり、しまっておくものは刀身に油を引いて湿気のないところで保管するなど、なるべく現在の状態を保つように心がけてください。
日本刀の美術品としての価値は、刀身以外にもちりばめられています。鞘に関していえば漆の塗り方や塗厚、金粉が振られている梨地と呼ばれるものや蒔絵が施されているもの。小柄(こづか)・笄(こうがい)・目貫(めぬき)の三所物(みところもの)と呼ばれるものの装飾品がかけていないか。縁頭(ふちかしら)・鐔(つば)・鐺(こじり)の装飾の美しさや図柄の統一感。
これらの刀装具は刀身と違い、付け替えができるので、損耗しやすかったり紛失する可能性が高くなります。それゆえに、制作当時の刀装具がそのまま残っている可能性は低くなりますが、丁寧に扱われているものであれば、欠品や図柄の不一致などはなく、その刀がどのように扱われてきたか容易に推測することができます。
このように、日本刀の価値を決める要素は多岐にわたります。突然出てきた日本刀に登録証がついていないなどのお困りごとや、一見しただけではわからない刀の損耗具合や日本刀の価値や保存方法を知りたいという方は、お気軽にご相談ください。
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